ヨガを始めたきっかけ ― 単なる高校の卒業プロジェクトではなかった
初めてヨガに出会うとき、多くの人は身体的な目的で始めます。柔軟性を高めたい、筋力をつけたい、痩せたい…ジムの代わりや、ウェルネスブームの一環として考える方も多いかもしれません。
正直に言うと、私もそうでした。
でも、今ヨガ講師として活動している私がはっきりと言えるのは、そういったフィジカルな側面は、ヨガのほんの一部でしかないということ。氷山の一角にすぎません。その下には、哲学、呼吸法、瞑想、自分自身との向き合い、規律、思いやり、そして「本来の自分に近づく生き方」が広がっているのです。
すべての始まりは、高校の卒業プロジェクトから
私がヨガと出会ったのは、スタジオでも、インフルエンサーの影響でも、本の中でもありませんでした。
それは、高校の卒業論文ならぬ卒業プロジェクトという、少しユニークな学びの場から始まりました。
私が通っていた高校はちょっと変わっていて、卒業するためには、自分でテーマを決めて1年間かけて完成させる「シニアプロジェクト」が必須でした。試験や暗記ではなく、自分の情熱に向き合い、現実的な目標を設定し、プレゼンテーションという形でアウトプットする、まさに“リアルライフ”なプロジェクトでした。
生徒たちは、自分の興味関心に沿って自由にテーマを決めていきます。料理教室を開いたり、ドキュメンタリーを撮ったり、何かを教える人もいました。
私はというと、インドと日本のハーフでありながら、インドに住んだことは一度もありませんでした。だからこそ、インドの文化を通して自分自身をもっと知りたいという気持ちが湧きました。
「インド料理」「ボリウッドダンス」「ヒンディー語学習」など、様々な案が浮かびました。でも当時の私は、運動好きな高校生。最終的に選んだのは、身体を動かす「ヨガ」でした。…そう思っていたのです、当時は。
でも今思い返すと、それは人生の中で最も大きな選択のひとつだったと感じています。
私のプロジェクト:ヨガ
テーマ: ヨガ
目標:
1年間で16回のヨガクラスに参加する
10個のヨガポーズをマスターする
体育の授業でクラスメイトにその10ポーズを教える
シンプルなプランでした。でも、まず最初の課題は、兵庫県神戸市でヨガの先生を見つけること。ここは東京のようにヨガスタジオがたくさんあるわけではありませんでした。
それでも探してみると、いくつかの出会いがありました。
アメリカ人のクンダリーニヨガの先生
趣味でヨガをしているインド人のお母さん
インドの文化に深く魅了されていた日本人女性の先生
その日本人の先生のもとで学ぶことにしました。
とても穏やかで、誠実で、知識が豊富で、なによりもインドという私のルーツに敬意を持って接してくれていたことに感動しました。若くて未熟だった私ですが、直感的に「こんな人になりたい」と思ったのを覚えています。
17歳、初めての夜のヨガクラス
学校のある平日の夜に、夜7時からのクラスに通いたいと親に相談しました。(はい、当時は夜9時半に寝る真面目な高校生でした…笑)
両親は快く許可してくれて、その16週間のヨガ体験が始まりました。
学校生活も順調。サッカー部のキャプテンとしての活動も楽しくて、大学からの合格通知も届いていて、まさに「人生うまくいってる」状態。今思えば、ヨガがそのバランスを支えてくれていたのだと思います。
当時はまだ、ヨガを「運動」だと思っていました。ただのストレッチ、呼吸、心地よい疲労感…。でも、それでよかったんです。それが私の入り口でした。
身体から心、そして魂へ
最初は、筋肉痛やストレッチ感が楽しくて、運動としてのヨガに夢中になっていました。でも、少しずつ、何かが変わっていきました。
呼吸に意識が向くようになった
クラス後の気持ちの変化に気づくようになった
「アヒムサ(非暴力)」「サントーシャ(足るを知る)」といった言葉に惹かれるようになった
ただ座っている時間が、だんだんと心地よく感じられるようになった
気づかぬうちに、内側の変化が起こっていたのです。
数年後、インドでの学び
本格的にヨガの哲学や瞑想、呼吸法を学び始めたのは、数年後にインドでヨガティーチャートレーニングを受けたときでした。
そのとき初めて、「ああ、ヨガってこんなにも奥深いものなんだ」と理解しました。身体から始まった旅が、心と魂にまで届いていったのです。
最初の一歩は、それだけで尊い
今、ヨガに興味があっても「身体が硬いから無理」「瞑想なんて難しそう」と感じている方がいたら、ぜひお伝えしたいです。
それでも大丈夫。むしろ、それが自然です。
ヨガは、どんな入り口からでも始められます。たとえ最初はダイエット目的でも、柔軟性を求めてでも、そこに間違いなんて一つもないのです。
一度のクラスで身体が変わることもあります。
でも、続けることで人生が変わるかもしれません。
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