ダーラナーとは?— ヨガの第六の教えと「集中」の力

アーサナの先にある、ヨガの深い実践へ

ヨガというと、ポーズ(アーサナ)や呼吸法(プラーナヤーマ)、リラックスの時間を思い浮かべる方が多いかもしれません。
でも、古代インドの経典『ヨーガ・スートラ』では、ヨガとは「心の静けさと統合へ向かうヨガの八支則」からなる、包括的な生き方の道とされています。

五感を内側へ向けるプラティヤハーラ(感覚の制御)の後に続くヨガの八支則の六段階が、今日ご紹介するダーラナー(Dharana)=集中です。

京都・東京のNami Yoga Studioでも、このダーラナーの実践は、クラスの中の静けさ、ポーズの保持、あるいは短い瞑想の時間の中で、自然と体験されているのです。

📖 ダーラナーとは?

サンスクリット語の“Dharana(ダーラナー)”は、「集中すること」「意識を一つの対象に留めること」を意味します。
語源の “dhri” は「支える」「保持する」という意味があり、心を一点にとどめておく状態がダーラナーです。

私たちの意識は普段、常にあちこちに飛び回っています。ダーラナーは、それをやさしく一つの対象に戻していく練習です。

🧘‍♀️ ヨガの八支則におけるダーラナーの位置づけ

ヨガの道は8つの段階(八支則)から成り立っています:

  1. ヤマ(倫理的な戒律)

  2. ニヤマ(内面的な規律)

  3. アーサナ(身体の姿勢)

  4. プラーナヤーマ(呼吸の調整)

  5. プラティヤハーラ(感覚の制御)

  6. ダーラナー(集中)

  7. ディヤーナ(瞑想)

  8. サマーディ(完全な統合/悟り)

ダーラナーは、外的な実践(動きや呼吸)と、内的な実践(瞑想・静けさ)をつなぐ橋のような存在です。
いきなり“無”の境地に入るのではなく、まずは一つの対象に意識を向け続けることで、心の集中力を高めていきます。

🌿 日常にあるダーラナーの例

実は私たちは、日常の中でも無意識にダーラナーを体験しています:

  • 本に夢中になって周囲の音が聞こえなくなるとき

  • アートや音楽に没頭して時間を忘れるとき

  • 呼吸に意識を向けてヨガをしているとき

  • ろうそくの炎をじっと見つめているとき

これらはすべて、「今、ここ」に意識が定まっている状態=ダーラナーの瞬間です。

🧘 ヨガクラスにおけるダーラナーの実践

Nami Yoga Studioのクラスでは、こんな形でダーラナーを育んでいます:

  • Flow & Meditateクラスで、呼吸と動きをリンクさせて集中を深める

  • HathaやSlow Flowで、ポーズをキープしながら感覚に意識を向ける

  • 呼吸法やガイド付き瞑想で、意識を「ひとつの対象」にとどめる練習

  • キャンドルやアイピローを使って、感覚を落ち着けて集中する

「心を空っぽにする」のではなく、心を“今ここ”に落ち着ける。それがダーラナーの本質です。

🔄 ダーラナーが現代に必要な理由

現代社会では、マルチタスクや情報の洪水によって、私たちの意識は絶えず分散しています。

  • スマホの通知、SNS、タスク管理

  • 常に人と比べ、評価される環境

  • 忙しさによる集中力の低下、不安、不眠

ダーラナーは、そんなバラバラになった意識を、そっと一つにまとめてくれる実践です。
それによって:

  • 頭の中がクリアになる

  • 落ち着いて判断できる

  • 心に余白が生まれる

  • 物事に深く集中できる

まさに、今の時代に必要な“心の筋トレ”と言えるでしょう。

🧘‍♂️ 今日からできる簡単なダーラナー練習

忙しい日常の中でも、数分だけでOK:

  1. 楽な姿勢で座る(椅子でもOK)

  2. 目を閉じて、呼吸の感覚に意識を向ける

  3. 「吸って、吐いて」を心の中でゆっくり繰り返す

  4. 思考が浮かんだら、それに気づいて、やさしく呼吸に戻る

この「戻る」動きこそが、ダーラナーの練習です。

🧘‍♀️ 「意識を向けた場所に、エネルギーが流れる。」

ダーラナーとは、その“意識の矢印”を自分で選ぶ力を育てる練習です。

集中とは、頑張ることではなく、“今ここ”にいること
ヨガの道の途中にあるこのシンプルな練習が、
やがて深い静けさと、内なる気づきへとつながっていきます。

Nami Yoga Studio(京都・東京)では、身体の動きだけでなく、こうしたヨガ哲学のエッセンスも日常に活かせるよう、クラスの中でやさしく紹介しています。

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